悲痛の雨

 雨が降る。深夜零時。音が体の意識を覚醒させた。気を取り直し、再度睡魔に身を委ねるも、3時間後にはまた起こされた。

 雨音の響く静寂の中、ふと思い出した。俺は、ある女性のサンドバッグだった事を。幸せな時間をぶち壊したくなる。そんなもの、どうせいつかは消え失せていくのだから、それなら自身でぶち壊してしまおう。と、意味もなく動いてしまう。宜しくない方へ。悲惨な惨状へ自らの身を置かなくては、人の気持ちを理解する事は出来ない。だから、人になる為に、上手く“寄り添う”事が出来るように、自身を苦しみに放り込んでしまうのだ。

 最初はわからない。その先に地獄が待っている事など。明るい未来があると、本気で信じて行動している。家を飛び出して未知の地に旅立った時も、そうであった。

 友人宅に転がり込んだ。その彼女たちが己を受け入れ、幸せにしてくれると、本気で考えていたのだな。本当に馬鹿げた考えだ。他人が己を幸せにしてくれるわけないのに。それこそ聖母マリアか何かと間違えたのかもしれない。

 そんな彼女たちと生活を共にした、1,2ヵ月。初めての繰り返されるよく分からない暴力を受けることとなった。その暴力は一発でこの体の均衡を破った。

 精神的暴力。
 目の前で彼女に「私死ぬから」みたいな感じで、包丁を持ち出された事。恐怖でしか無かった。歩いている最中、イライラした彼女が煙草を本人の腕に、見せ付けるように押し当てた事。また、彼女がODをする為の薬を買いに行かされた。良くないことと、知りながら、加担するしかなかった。もう、彼女はサイコパスでしか無かった。

 身体的暴力。
 何か言うと、彼女の気分で蹴られ、殴られ、胸ぐらを捕まれ張り倒され、壁に追い込まれ、ひたすら殴られ。それが続く恐怖。痛み。そして、その行為を黙認する、彼女の彼氏。信じられない事に、止めることなく、彼は携帯を弄ってひたすら無視を貫いていた。手に負えない彼女を止めることは出来ないって思っていたのだろうか?どうゆう気持ちだったのかわからないが、助けを求める事は出来なかった。逃げ場のない先の見えない状況に記憶は分断された。

 金銭面の暴力。
 飲食は全て自身で用意していた。まぁ、その時、食していたのはゼリーだけだったので、何とかなったが。洗濯はコインランドリー。彼女たちの洗濯機を使用する事は拒まれた。それは致し方ない。
 しかし、1,2ヶ月後、家を一緒に探してくれるはずが、何故か生活保護課に置き去りにされた。おかげで、2ヶ月、ダルクや精神科病院を転々とさせられた。本気で死ぬしかないと思わされた。

 その生活で、俺は23キロ痩せた。尋常ではない痩せ方だった。更にパニック障害を併発させた。トラウマになってしまったのだろう。そりゃそうだ。暴力のフルコースを堪能したのだから。

 そして、現在SNSで彼女が付きまといをしてきている。言い分は“金を返せ”だそうだ。

 無論、放置している。無視を貫き通している。理由は簡単だ。関わりたくないからと、俺らが払う金はこのトラウマへの賠償金として受け取っておいてやるって気持ち。

 そもそも、サンドバッグにしといて、金の請求とは図々しいものだ。彼女はよく『搾取』と言っているが、最初に思う存分楽しんだのはどちらだったのか、しかと考えるべきだな。他人に暴力を振ってはいけない。その常識を理解し、社会の仕組みを理解してから『搾取』と言う言葉を使って欲しいと思う。それが出来ないから、役所の人に迷惑をかけ、警察からマークされることになるのだ。

◆注釈

  • 『役所の人に迷惑をかける』
    彼女は俺らの事で頭を下げたと言うが、役所の人からはうるさい、騒ぐ、大変迷惑だとよく連絡を貰っていた。
  • 『警察からマークされる』
    怖くて警察を迷惑にも呼んでしまった時、彼女とは縁を切って地元に戻るように言われた。離れろと。その通りだ。

 雨の日は過去を精算したくなるものだ。俺は忘れない。あの過去を。潤が逃げ出さなければ、永遠にお前のサンドバッグになっていた事を。

 ネットで知り合った人について行くのは怖いことだ。本性が何処にあるのかわからない。サイコパスはその辺にゴロゴロいることを知るべきだ。吐き出し失礼した。

虚無

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