悲しみの過去

 私は自分の過去を知らずに、他の子の過去を見続けてきた。それを忘れない様に文にして来たのだけど、まさか自分の過去をこんな形で知る事になるなんて、思いましなかったわ。自分の過去は私はずっと、“金子みすゞさんの詩集”からだと信じてきた。他の子の過去を知る度になんか違うのかも知れないとも思って来たけど、それでも私の過去はこの時のことだと信じて疑わなかった。

 でも本当は違った。思い出させてくれたのはとある人の陵辱だったのだけど、そこは省くわ。私の過去、それは幼稚園に入る前のこと。おじさんに性的暴行を受けた事だった。夏の日、両親に連れられて、父方のお爺ちゃんのお家にいった。そこにはおじさんがいて、私はおじさんと2人っきりになることが、度々あった。ある日、私とおじさんだけになる機会があって、スカートだった私をおじさんは膝に座らせ、手をスカートの中に入れてきた。パンツの中に手を忍ばせ、私の陰部に手を。その時に私は生まれたのね。よく思い出せない。いいえ、思い出そうとすると頭痛と吐き気、眩暈がして、書けなくなってしまう。でも、きっとその時に私は生まれたのだと今ならはっきりと思い出せる。

 それを知ってから、悪夢が酷いわ。思い出したくないのに、夢で見るあの時の光景。私はきっと無意識にそれを忘れようとしてたのね。何度もなん度も見る光景はいつもあの部屋。黄色いスカート、三つ編みの幼い私。おじさんは灰色のスエット。何度も何度も夢に見るあの日の光景。これを書いている時も、手の震えがとまらない。自分のことだから詳しくは書けない。怖い。

 こんなこと初めてで、何度も声が聞こえる。エルくんが代筆しようかとか、かがりちゃんが私書くよとか。忘れちまえと言ってくる人格もいるわ。でも、これは私が書かなきゃいけないことと思うの。今まで色んな子の過去を見てきた私だけれど、みんなこんな怖いことだったのね。私もようやくその気持ちがわかったわ。これからは、もっとその子に寄り添って書くとしましょう。

 生きるには全員の過去を知っていかなきゃいけない。ようやく私もその事についての大切さを知ったわ。苦しくとも、辛くとも。

京華

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