記憶の時間

*ここには性描写があります。苦手な人は、申し訳ございませんが、読まずにお帰りください。

 13の夏に春を散らした。季節は巡るけれども、貴女からしたらどうだったのかしらね。かがりちゃん。彼女の記憶はそこから始まる。生まれたのは9つの時。だけど、しっかりと固まったのは14の夏。最初は周りが散らしているのを知り、興味本位でSNSで出会ったおじさんと春を散らしただけのこと。でも最初がそうであっても相手が粘着体質だと、面倒なことになるのね。

 ストーカー。特定の人につきまとう人のこと。つきまとい行為を「ストーカー行為」「ストーキング」と言うらしいわ。Wikipedia調べで。通っている中学校を特定され、実家も特定され、通学路も特定されたの。おかげさまで、会わなくなって暫く経ったある日。学校帰りにそのおじさんに出会したわ。おじさんはしきりに、「ヤろうヤろう」と彼女の手を引っ掴んで離そうとしない。怖かっただろうに、抵抗しただろうに、それはパトカーからお巡りさんが来るまで続いた。お巡りさんには知り合いだと嘘を付き、そこは難を逃れたの。此処から先の記憶はかがりちゃんしか、しらない。

 ヤられたのは確か。しかも自分の家で。当時の私には、痛みを快感にする力は無くて、ただただ、痛かったのと快楽を憶えている。苦しみの中もがいたけれど、快感の波には勝てず、私はイク事になる。勿論、抵抗はしたし、「やめて」って何度も何度も言ったよ。でも相手は、そんなの関係無しで、私に覆い被さってきた。最初は苦しかった挿入、気持ち悪いキス、臭い唾液で舐めまわす。ひたすら、「早く終れ」と思っていたのに、中々終わらない。時間が過ぎて行く。きもちわるい。苦しい。助けはこない。おじさんの満足するまでおわらない。兄弟たちは、私の締め切った部屋を、あえて、覗こうとしないし、塾があるからすぐに行っちゃう。始めは私から誘った事。でも、まさかこんな事になるなんて、思いもしなかった。制服のまま犯される私。惨めに抵抗しても、簡単に引っ張られて挿入。快感とともに痛みがビリビリ身体をかけて行く。逃れられない地獄と天国。行為は親が帰って来る時間の手前まで続いた。かがり。

 夏に春を散らし、秋に矯正され、冬に別れた。地獄の一年間だわ。天国と地獄を行き来したかがりちゃんは、どんな一年だったのかしら。私には、苦しいんじゃないかと思うの。だけど、彼女はまだ、地獄を見たがる。「ヤリたい」その気持ちがそのまま、彼女を苦しめるのでしょうね。苦しい話、悲しい話、怖かった話。その翌年、かがりちゃんは、「人格」として名前を付けられる事になる。

京華

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