水の先に

 限りなく赤い光が1つ2つと私の足元を照らす。暗闇の中。光るその道の先には全く何も見えず、暗闇の空間だけ。前に進むか、戻るか。答えは進むしかなく、私は前を向いた。先程まで、美しい幻想的な世界にいたのに一変して、なんて禍々しい道なんだろうか。何か私はやらかしてしまったのか。私はこれからどこに行くのか。不安が胸に刺さる。この道はまるで天国から地獄に向かう堕天使の道のよう。私は知らないうちに、堕天してしまったのかしら?

 光と水と音の幻想的な空間。五感の体感型アート。その一角に地獄へと通ずる道がある。とても幻想的で美しいエリアから一変。その道は突如現れた。音は低く、遠くにポンッと水の落ちる音が響くだけ。光が私達を誘う。美しい赤。怪しい赤。危険信号の赤。黒い通路に灯る赤は足元を照らしてくれた。でも、それが足を燃やしている火にも見えて、天国から落とされた様な感覚に陥る。何故楽園に留まらなかった?何故あの場から逃げた?その火は私を攻め立てるように疑問をぶつけた。答えは簡単で『もっと』と欲に眩んだから。そして、『この先にはどんな物が?』と好奇心が働いてしまったから。貪欲な人間の醜さが知識欲と現状に満足させなかったのだ。きっと、私にこう問いかけて来たのは、光と音の便りだったのかもしれない。これも私の勝手な妄想。自分の都合の良い様に解釈してしまうのは良くない事ね。

 流れる水の音が次のアトラクションへ、私達を流していく。汚い人間は水で清める必要がある。私達はどんなに頑張っても光や音のように、美しい存在にはなれない。身の程を知ること。もとても大事な心がけを思い出した。天国から出てしまった私達に何が待ち受けるのか?答えは水の中。ポチャン。水は何処までも清らかで美しく、光を透過して流て命を育む。花と鯉の世界へ。霧のように靄がかった足元には散りゆく花が咲き誇る。その合間を縫って色取りの鯉が足元にやってきた。美しい水の中。踊る花びらに鯉が促されダンスを楽しむ。しかし、その鯉や花びらは決して触る事は許されない。一度触れれば幻想的な風景は瓦解し、鯉も花も消えゆく。そして残るのは水の音のみ。不純な私達が触れてはならない幻想的な空間、清らかな世界。

 所詮これはアトラクション。しかし、その中で私達、人間の愚かさ、汚さを見せ付けられた様な気がしたのは気の所為だったかしら?入り口のモニュメント、赤い流れに丸い黒が点々と。そこから黒が溢れ出し、赤を侵食していく。これはもしかしたら、私達が黒で水を侵食してしまっていることを暗示していたのかなっとすら思えてしまう。好奇心は身を焦がす。もっとという物欲が身を滅ぼす。きっと、その心が黒い点なんだわ。なんて愚かな私達。

小鳥遊京華

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