生きる為に生かされている

 あたしは生きる手段を間違えたらしい。13の時に興味本位から身体を汚してきたあたし。別に傷を抉っているつもりも無いし、やろうと思ったらいつでもできるようになっちゃった。愛情とかくだらないと思ったし、気持ちよければなんだって良いと思った。例えそれで性病に罹ったとしても、それで死ぬ事になっても良いって思った。それでさ、風俗に堕ちた。気持ち良くないのに気持ちいいフリもたくさんしてきた。私の天職はコレだ。そう思い込んでいた。徐々にお腹も大きくなってきて歩くのもキツくなってきて苦しい、と感じるようになった。基本はあたし呼ばれればいつでも行くような子だったのに、誰の子かも知らない子を宿して、無理して働いて、結局、性病に罹って、コンジローマ。そのせいで手術かもとか帝王切開とか言われて、あたし、何してんだろうって今更思った。

 生きる為に被った仮面。今はその仮面に踊らされて、自分が何なのかどうしたいのかわからなくなってる。仕事してないと不安になる。お金、自由に出来なくなると困るって怖くなる。でも、仕事ちゃんとできる自信も無い。仕事が怖くなってる。でもさ知ってる。真っ当な仕事ってそんな稼げない。死ぬ気で休日出勤しても、風俗の方が稼げるし、楽。やってて楽しんでる自分もいるし、天職とか思ってるし、手っ取り早く稼げるし、楽だし、頑張ればランキングとかに載ったり成果も見えやすい。辞めたいとは思ってる。けどさ、辞めたくないあたしもいる。どっちが本当なんだか分からない。

 ゆうたと一緒にいると普段の被ってる仮面が一枚一枚剥がれていくのを感じる。笑顔とご機嫌伺の為に作った仮面が剥がされていく。無意味に泣きたくなってくる。あたしは弱虫なんかじゃない。別に苦しいとか感じない。そんな物いつしか仮面に埋もれて消えた。言われた通りの事を笑顔でこなしていく。それがあたし。いつでも明るくなくちゃ。人懐っこく気紛れでわがままだけれど、やる事はちゃんとし、成果は上げて信頼も勝ち取っていき、自分の有利になるように、自分が楽になるようにこなして行く。それがあたし。嫌なことでも「えー嫌だけど仕方ないなぁ。行ってきます!」って行くのがあたし。どんな話にも食らいついて行き、話してて面白いと思わせ、眠くても、つまんなくても、関係なくオーバーリアクションで反応していく。これが全て仮面。初対面の人には積極的に話しかけて、できるだけ気持ち良く仕事して貰えるように気を付ける。これも仮面。緊張してる人には、笑顔で大丈夫って声かけて、敬語とか要らんよって、フランクに話しかける。仮面。慣れてる人には、今までにないような体験をしてもらうために、普段よりも頑張る。これも仮面。好きって言って来る人には、心にも無い好きをいい、気持ちいい?と訊いてくる人には痛くても気持ち良いよって言う。仮面仮面仮面。弱音は吐かない。笑顔の仮面。普段の私生活でも、暗い面は海に投げ落とし、にゃーんって甘えて明るく振る舞うのが当たり前。暗いあたしなんてあたしじゃない。仮面。仮面があたしであたし自身がきっと仮面なんだ。

 だから、そんな仮面を剥いで来るゆうたが怖い。仮面じゃないあたしを見てがっかりされたら?苦しいって言ってしまったら?仮面を剥がれたあたしがめちゃくちゃ暗い奴だったら?幻滅しない?嫌がらない?怖がらない?ギャップあり過ぎて着いていけなくならない?怖いからついつい突き放す言葉を言ってしまう。こんなあたしの事あたしですら分からないのに、他の人が理解してくれるなんて馬鹿馬鹿しい。あり得ない。占い師とかかって思うレベル。多分、本音は、『助けて欲しい』なんだと思うんだ。なにから助かりたいのか分からないけど、きっと助けをずっと待っているんだと思うんだ。泣いてるあたしを抱きしめて欲しかったな。もう叶わないかもだけど。『大丈夫、大丈夫』って慰めて欲しかったな。どんなことがあっても守るって言って欲しかったな。

 

 仮面、全て取っ払って素直に笑いたいな。いつかそんな日が来るのかな。なんにも考えないで笑える日がくるのかな。素直に喧嘩とかしてみたいな。自分の意見ハッキリと言ってみたいな。今は仮面があるからきっと出来ない。いつかでいい、いつかでいいから、仮面に振り回されない自分の意思で生きてみたいな。

 

 かがり

関連するかも知れない記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です